【ホテル御三家】憧れの帝国ホテル東京ステイ② 食事・館内施設編
この記事は前回の記事の続きです。前編をご覧になっていない方は是非①客室編よりご覧ください。
ミュージックルーム
さて一通り客室を物色し終えた後は、ちょっと特別なお部屋に向かいます。予約の際にお願いしていました、ミュージックルームです。
帝国ホテルにはピアノが常設してあるミュージックルームがあり、宿泊客は2時間まで無料で利用することができます。ちなみに宿泊者以外の人が利用すると1時間で18,000円です。(?????)
べらぼうな値段ですがその理由はおそらくこの部屋に置いてあるピアノにあります。
このピアノはSTEINWAY社のもので、ピアノ界のポルシェとも称される高級品です。一般的なグランドピアノが300万円ほどの所、STEINWAYは家庭用で1200万〜、コンサートホール用のものになると2000万円を軽く超えます。家が建つじゃん。
全てのピアノが職人の手による手作業で、注文から完成までに1年以上かかると言われています。
今回はピアノが趣味の彼女のために、このお部屋をお借りしたのでした。
ピアノに限らず豪華な室内です。もちろん防音。
猫足のテーブルセットが雰囲気を引き立てます。
ソファーもふかふか。
このカーテンに妙に親近感を抱くのは、髭男爵のひぐち君(色違い)を彷彿とさせるデザインだからでしょうか。
テレビとスピーカーも用意されてあるので対応するメディアを持ってくれば爆音で楽しむこともできます。
過去にこの部屋を利用したであろう、かつすごい人であろう方々のサイン入りの写真も飾られています。
(調べたら世界三大テノールのパヴァロッティ氏などそうそうたるメンバーでした)
スタインウェイのピアノが無料で弾けるなんて滅多にないことですから、宿泊の際は是非この部屋を利用してみてください。
夕食 パークサイドダイナー
この日の夕食はホテル内一階のパークサイドダイナーで頂くことにしました。帝国ホテル内のレストランとしてはカジュアルな位置付けでお財布にも優しい。
カレーやグリル料理が3000円〜、パンケーキが1500円位の価格設定で、誤解を恐れずに言えば高級なファミレスといった様子。あまり肩肘張らずに食事ができるのが嬉しい。
とは言えゲストはやはり帝国ホテルの客だな…という雰囲気でみなさんきちんとした格好をされています。
「"甚だ勝手ではございますが"、サービス料10%を加算させて頂きます。」私の語彙には一切無い言い回しにややウケます。
「甚だ勝手ではございますが」という慇懃なフレーズは私の中でちょっとした流行語になりました。
いろいろ悩みましたがダイナーセットをお願いしまして、まず前菜のスモークサーモンとポテトサラダ。
ステーキ丼
カスタードプリンと美味しくいただきました。
食事も美味しいですがこういうところは人間観察をしているのが楽しいですね。
明らかに常連であろうお爺さまが一段高いカウンター席から降りる時、スタッフが当たり前のように肩を貸し、お爺さまも当たり前のように肩を借りて降りる。そしてスタッフが差し出した杖を笑顔で受け取ると礼を言い去っていく。
またあるテーブルでは医者か教員か、はたまた代議士か分かりませんが『先生』と呼ばれるスーツ姿の男性がスタッフと親しげに会話。
う〜む、住む世界が違います。ここの人たちを見ていてだんだん気づいてきましたが、良いホテルではスタッフが好意で何かしてくれる時にはむしろ遠慮しないのがマナーなんでしょうね。車のドアは開けてもらい、重い荷物も持ってもらい、それに対して笑顔で礼を言う。ここまでが様式美として完成しているような気がします。
帝国ホテルアーケード
食事の後は腹ごなしにアーケードを散歩です。
帝国ホテルにはアーケードと呼ばれるショッピングモールがあります。50以上の店舗が入っていて、コンビニやドラッグストア的な日用品から葉巻にお酒はたまた刀剣などの嗜好品、ファッションにジュエリーなどさまざまな高級店が軒を連ねています。
今日本全国に、庇などで覆われたいわゆるアーケード商店街がありますが、その発祥がこの帝国ホテルアーケードです。現在は地下にありますが、大正12年に帝国ホテルアーケードが誕生した際には一階に位置し、外国人客向けの店が多く出店していました。
ディズニーシーのインディージョーンズっぽい通路
店舗一覧を見てみますが、びっくりするぐらい知らないお店ばかりで慄きます。知っているのは食器のノリタケと、レディースアートネイチャーぐらいでしょうか。やはり中高年をターゲットとしたお店が多いようですね。
当然ですがジャスコのモールに行くような感覚ではお店に入れません。3万円する子供服とか、200万円のジュエリーなどが平気で並んでいます。
あと思ったのですが、私にとってはまったくもって生活に「必要ない物」が多いですね。あんまり欲しいものが無いです。これは決してバカにしようとか物が悪いとかそういう意味じゃなくて、生きてる世界が全く違うんだな、という感覚です。
超高い食器とか…200万のネックレスとか…全く人生には必要ないじゃないですか。でもそれを求める、求められる人生があってそこに喜びを感じる人がいるわけで、これは面白いなぁと思いました。
まさに住む世界が違うと思い知らされた面白い経験でした。
ルームサービス ワインとデザート
さて、アーケードでウインドウショッピング(死語)の後はお部屋に戻ります。
チェックインの際にワインクーラーをお願いしておいたのですが、夕飯中にしっかり準備しておいて頂けました。
そしてルームサービスでお願いしていたデザートです。こちらはアーケードに入っているショップ、ガルガンチュワのケーキ。ホームページで見た時に一目惚れしてこのケーキの予約をしておいたのでした。
カトラリー等は特にリクエストしていませんでした(なぜならそこまで気が回っていなかったから)が、しっかり用意して頂き大変助かりました。一輪挿しのバラもご好意で用意していただいた模様。
このケーキはロビーにあったドーム型のバラ装花をイメージしたものです。これ↓
ピスタチオの生地の上にバラのムース、さらにその上を真紅のルビーチョコレートソースで包んだものです。食べるとバラの香りが広がります。(と説明文に書いてありました。)
※カットがうまくいかず断面にソースがつくとややおどろおどろしい感じになります。
頂いた感想としては「あと5個食べたい。」といった感じです。泡が進みます。
あとワインクーラーって富豪っぽくて好奇心で使ってみたんですけど、すぐ冷えてなかなか良いですね。帝国ホテルのシンボルである百獣の王ライオンが我々を見守っています。
また見づらいと思いますがテーブルクロスにもロゴが。消耗品なのに本当に細かいところまでお金をかけています。
デザートとワインで血糖値がグンッと上がって、うつらうつらしてきました。部屋飲みはそのままゴロンと横になれるのが良い。
窓の外には日生劇場と、静かな日比谷公園。日本のど真ん中の夜を眺めながら贅沢な眠りに落ちて行きます。
朝食・チェックアウト
翌朝は何も予定を入れていなかったので、のんびりと起きてからホテルショップのガルガンチュワに朝食を買いに行きました。
ガルガンチュワは「帝国ホテルの味をご家庭で」をコンセプトにしたショップでパンから惣菜、もちろんお土産までなんでも揃っているお店です。
今回は菓子パンとサーモンのマリネを買ってきてお部屋でいただくことにしました。パンは大体700円程、サーモンマリネは1200円です。この値段に驚いているようでは帝国ホテルで生きていけません。「なるほどね」みたいな顔で会計を済ませます。
そして当たり前のように美味い。
朝食をいただいた後は名残惜しいですがチェックアウト。一晩でしたが良い夢を見させて頂きました。
チェックアウトに並んでいる最中に「御荷物はお預かり致しますか?」とスタッフが声を掛けてきます。ちょうどお願いしようと思っていたのでややビビりながらお願い致しました。
「ご宿泊はいかがでしたか?」「出来るなら今日も泊まりたいです」お世辞ではなく本心ですが、そう出来ないのが小市民の悲しいところです。
ランデブーラウンジとインペリアルタイム
チェックアウト後はどうしようか悩みましたが、そうそう来れない帝国ホテル、骨の髄までしゃぶりつくなければならないと貧乏根性に身を任せもう少しずるずると館内に残ります。
お邪魔したのはロビーにある『ランデブーラウンジ』
ドラマなどにも度々登場する、帝国ホテルの顔とも言えるラウンジです。
紅茶を頼もうとしたら紅茶だけで5種類、さらにハーブティーも4種類と様々な選択肢が。私はアールグレイをお願いしました。なぜなら聞いたことがあるからです。
ちなみにこの一杯(ポットで頂くので正確には2.5杯ぐらい)で、午後ティーが10L分は買える値段です。
悪趣味ながらこのラウンジも人間観察が楽しいところです。プチお見合いをしていると思われる中年男性とお嬢様のぎこちない会話や、着物が普段着といった雰囲気の大おばあさまの美しい所作など、普段はなかなかお目にかかれない光景が繰り広げられています。
またこのラウンジに隣接して『インペリアルタイム』と名付けられた、帝国ホテルの歴史的資料を展示したスペースがあります。
マリリン・モンローやジョン・ウェイン、チャップリンといった大スターから、エリザベス2世女王陛下やニクソン大統領、鉄の女マーガレット・サッチャーなどの要人まで、過去に帝国ホテルに滞在した様々な有名人の写真も飾られています。
中には戦前に使われていたフライパンも。
戦時中の金属供出の際には、料理人は中庭に埋めてまでしてこのフライパンも守ったという逸話が有るそうです。
またフランク・ロイド・ライトが設計した、ライト館と呼ばれる先代の帝国ホテル本館についての展示も見ることができます。
石造の建物は様々な意匠が施されとても壮麗だったとの事。建替えの際には反対運動が起こるほど愛されていた建物です。
現在はその一部が愛知県の犬山市にある「明治村」に移築されており、往年の美しい姿を現代に残しています。
その建築の特徴はこのような飾柱。
柱の中には電灯が仕込まれており、ランタンのように優しい光に包まれていたとの事です。石材はこのブログでも以前に出てきた大谷石を使用しています。加工が容易で耐火性に強いと言った特徴を持つこの石は国会議事堂等を始めとし、戦前から多くの建物に使用されてきたのですね。
往年の帝国ホテルを想う素敵な展示でした。
帝国ホテルプラザ
続いては帝国ホテルプラザに向かいます。こちらもショッピングモールの様な施設で、昨日訪れたアーケードは本館地下に、プラザは新館であるタワー棟の1-4階にあります。
本館からはアーケードと地下通路を抜けていくことができます。
やっぱりディズニーシーっぽい階段。アラビアンコーストっぽい。
あ!回転ドアだ。ホテルっぽくてテンションが上がるぞ。10年ぐらい前に事故が相次いで最近は見なくなった印象です。
一回入り口は吹き抜けになっていて開放感があります。
そして土曜にもかかわらずあまり人がいません。見ているうちにわかりましたが、やはりアーケードと同様に一般人が欲しがるようなものはあまり売っていないからでしょうか。
こっちはアーケードよりかなり趣味性が強いですラインナップです。特に女性向けのお店が多いかな?
B1Fに「天一」と書いてあって、マジ?天下一品(ラーメンチェーン店)やるなぁ!と思っていたら、普通にめちゃくちゃ高級な天ぷら屋さんでした。
古代ローマのコインが売っています。どうやらマジモンのようです。どんな人が買うんだろうか。
こちらは中世ヨーロッパみたいな素敵な家具が並びます。ほとんど3桁万円で驚愕。まずこの家具が似合う家を買うところから始めなければいけません。
やっぱりプラザでも何も買うものがありませんでした。ここに訪れる人たちが別世界の住人であることがよくわかって面白い体験でした。
というわけで一泊二日でホテル内をぐるぐると探検しつくりましたが、本当にざっと見ただけで食事や体験をゆっくり楽しんだから一泊では全く足りなさそうですね。もうほとんど一つの街のような規模で、ホテル内だけで全てが完結します。歩いているだけで楽しいホテルでした。
総括
「何か他にお手伝いできることはございますか?」何度も耳にした帝国ホテルスタッフの口癖です。ドアマン、フロント、ウェイターにベルスタッフ、誰もが去り際に必ずこう聞いてきます。
それだけではなく相手が望んでいることを察して、荷物を預かったり肩を貸したり、あるいは必要な備品を用意したりと常にゲストに目を配ってくれています。
このスタッフの素晴らしさが何にも変え難いこのホテル一番の財産であると感じました。
今回の宿泊にあたり、コンシェルジュにはさまざまなわがままを聞いていただきました。お部屋の相談からミュージックルームやレストランの予約、花束やケーキの用意等、こちらの細かい注文もあり長い時は何十分も電話したことがありましたが嫌な態度一つせず全て完璧に準備していただきました。
そしてそうした情報はコンシェルジュだけでなくフロント係にもきちんと全て引き継がれており、またケーキや花束などサプライズに関することは決してあちらからは口にしません。毎日膨大な数訪れるゲスト一人ひとりの情報をきちんと把握しているその態度に誇りを感じました。
外資系高級ホテルのようなド派手さはありません。部屋はどちらかと言えば地味な方でしょう。でもシミひとつないカーペットに清潔感の高い客室、聞いたらなんだって用意がある備品、そしてなにより最高に気の利くスタッフ達。滞在するゲストのことを一番に思うその姿勢はとても素晴らしいものです。
ちょっと、いや、かなり無理をした帝国ホテルステイでしたが払ったお金以上の学びを得たとてもよい経験でした。
私の中で何度でも泊まりたいお気に入りのホテルになりました。何度でも泊まれるかは、また別問題ですが…。
追記
宿泊したのはもう昨年のことなのですが、今年に入ってから手紙が届きました。
宛名が筆で書かれており、全く検討もつかなかったので恐る恐る差出人を見てみると「帝国ホテル東京 総支配人」の文字。
中身はアンケートを書いたことに対するお礼状でしたが(怒られなくてよかった)なんと総支配人の直筆!お返事が遅くなって申し訳ございません…との事でしたが、そりゃ時間もかかるよなと。
アンケートに記入したのは返事を求めるような内容ではなかった(ホテルスタッフへのお礼)でしたが、恐らく全てのアンケートに対して返事を出しているのでしょうね。
毎日膨大な数の意見が寄せられるはずで、それに一つ一つ真摯に向き合って行く…手紙を出すのだってタダじゃないですし本当に凄いホテルだと改めて感じました。こんな事までされたら、また泊まりに行きたくなってしまうではありませんか。こまったなぁ。
関連記事〈高級ホテル〉