大人の社会科見学『豊洲市場』でマグロの競り見学
午前5時半、鐘の音が高らかに響き渡ると、競り人の掛け声が威勢よく飛び始めます。
ここは豊洲市場の7街区水産卸売棟、マグロのせり会場です。
2018年にオープンしたばかりの豊洲市場に見学に行ってきました。最新鋭の巨大公設市場、見どころ満載の大人の社会科見学です。
アクセス
豊洲市場は江東区豊洲にあり電車でのアクセスはゆりかもめ「市場前駅」が最寄、駅名の通り目の前にあります。
ただし後述するマグロのせりを見学するためには5時半ごろに到着する必要があるため、電車でのアクセスは近郊の人にしか難しいかもしれません。
(始発は土休日ダイヤで5時18分に到着しますが、それに乗るためにはそもそも5時過ぎには豊洲駅に到着していないといけないので、豊洲の1億円マンションを買うところから人生をやり直す必要がある)
車でアクセスする場合、今までは駐車場がないという問題がありましたが、2020年5月より市場の中に「千客万来パーキング」(458台収容、24時間出入庫、最大1500円)がオープンし、とても便利になりました。
このエリアの24時間最大料金としてなら比較的良心的です。ちなみに私の最寄駅駐車場の24時間最大料金は300円。木で出来た手作りの集金箱に投入していく性善説スタイルです。
まだ眠っている東京を走り抜けて豊洲に向かいます。
「まぐろのせりを見るために早起きをする」という奇特な人種がどれほどいるのかわかりませんが、5時半前の時点ではかなり駐車場は空いていました。
ここからはペデストリアンデッキを抜けて、せりが行われる水産卸売場棟に向かいます。屋根付きなので雨でもありがたいですね。
水産卸売場棟《TUNA Auction》
豊洲市場のマグロのせりは外国人観光客から「ツナオークション」と呼ばれ、かなり人気のある観光地となっているようです。
昨今の情勢から外国人観光客はほとんど居らず、観光業としてはピンチかもしれませんが、ある意味では人が少なくゆっくり見られるチャンスでもあります。
駐車場からは案内に従って行けば大丈夫、5分ほどで着きます。検温をパスして水産仲卸棟に入るとまず巨大クロマグロが迎えてくれます。
全長は2.88m、チェ・ホンマンに換算すると1.32チェ・ホンマンになります。チェ・ホンマンの大きさがよくわかる展示です。
途中にはさかなクンさんのサインもあります。「ギョ開場1周年おめでとうギョざいます」とのことでした。
その先に見えてきましたのがマグロのセリの見学場所です。かなり長い廊下でガラス張りになっています。
この日は大雨で気温も低く、見学客はまばらでした。開業当時は窓が埋め尽くされるほど観光客が来ることもあった様です。
そして眼下に広がる大量のマグロ、1日平均で冷凍マグロが1000本、生マグロ200本の取引があるとのことです。
マグロは尾の部分を切り取り断面を展示しています。仲買人達はここをライトで照らしてじっくり眺めたり、触ってアブラのノリを確かめたりしながら品定めをしています。
到着するとほぼ同時に鐘が響き渡ります。せり開始の合図です。
せり人がお立ち台に上がると、仲買人が集まり「手やり」と呼ばれる符丁を使って値段をオークション方式でつけていきます。
せり人はめざとくそれを察知し、大声で値段を読み上げていきます。一本のマグロのやり取りにかかる時間は数秒〜数十秒、すごいスピードでせりが進んでいき、買い手がついたマグロはどんどん運ばれて行きます。
ガラスで仕切られてはいるもののせり場の音もスピーカーを通して聞こえる様になっていて、丁々発止のやりとりは非常に緊迫感があってこれは面白い。
見学通路はL字型になっていて、後ろからも見渡せます。
これだけの数のマグロが毎日取引されているのだから驚きです。
ちなみに階下にも予約制の見学デッキがあって、せり場と同じ地平で音や匂いを感じながら見学できるスペースがあります。同じ高さなのでやや見づらくもある様ですが、迫力は段違いとの事で今度はそちらも行ってみたいですね。
マグロ等の大物を扱うエリアを背にして反対側には、各種魚介類を扱うエリア。
ここの床が乾くことはおそらく一生ないんでしょう。
縦横無尽にターレが爆走し、発泡スチロールを山積みにしてはどこかに走り去ります。なんとも忙しい光景です。
せりもそろそろ終盤のようですので、続いては朝食を食べに向かいます。朝3時起きなので腹ペコです。
水産仲卸売場棟《飲食・物販店舗》
豊洲市場内に飲食店が固まっているエリアはいくつかありますが、1番大きいのが水産仲卸売場棟の場内飲食店店舗売場です。
せり場からは5分〜10分ほど歩いて向かいます。
市場自体が大きいのはもちろん、道路を挟んでいたりするので棟間の移動が結構大変です。どことなく空港っぽい雰囲気があります。基本的に外のデッキも屋根があるので暑さや雨も多少は防ぐことができます。
水産卸売場棟から水産仲卸売場棟に抜ける途中に管理施設棟を通りますが、こちらにも飲食店があります。
飲食店の利用者の半分以上は長靴を履いた市場関係者です。現在は混雑対策として、関係者しか利用できない飲食店も一部あります。
検温をパスして仲卸売場棟に入ります。こちらには25店舗ほど飲食店が入っていて、海鮮はもちろん、牛丼、インドカレーに洋食などなんでもあります。
景観条例が制定されている古都にありがちなタイプの吉野家
本日のお目当てはこちらの仲家さん。コロナ以前は寿司大と並ぶ屈指のかなりの行列店だったようですが、この日は朝7時頃にスッと入ることができました。先客は2名のみ。
海鮮丼がメインのお店で周囲の相場感からしてもかなり安いです。
座席は10席少々しかなく、市場関係者用と一般客用に分かれています。必ずしも半分というわけではなく、市場関係者の混雑傾向を考えながら席数を配分しているようです。
肝っ玉母ちゃんぽい店員さんに案内され着席。私はなかおち丼を注文。1200円、小鉢と味噌汁もつきます。
これが濃厚な味でうまい。味噌汁もダシが効いていて丁寧な味です。同行者は海鮮丼を注文。このボリュームで1500円です。
店員さんはよく気の利く人で、追加の料理が時間かかるからゆっくり食べててね、とかお水冷たいけど大丈夫?と女性客に聞いたり、忙しなく働いています。市場の女!という感じで非常に気持ちの良い人です。
ご馳走様でした。
腹を満たした後は食後の運動がてら、上階の「魚河岸横丁」に向かいます。
こちらは約70の物販店舗が集合したいわばショッピングモール。プロ仕様の様々な商品が集まります。
http://www.uogashiyokocho.or.jp/guide/
魚河岸横丁に向かう途中にはあの"ターレ"が展示してあります。
ターレは見ての通り貨物運搬用の乗り物ですが、バッテリーで駆動するものがほとんどです。これは建物内であることや、飲食物を扱う場であることから排気ガスを出さないための工夫です。
このため見た目に反してフィーーーンと未来的な音がします。
ちなみにナンバーがついていることからわかるように、公道を走行することもできます。運転に必要な「小型特殊自動車免許」は原付以外の免許の下位免許となっていますので、普通自動車免許などを持っている人であれば誰でも運転できますよ。
市場内を縦横無尽に行き交うターレは見ているだけでも楽しいです。ちょっとヒヤヒヤしますが。
3階から入って4階が魚河岸横丁ですが、2階は本来の機能である仲卸売場です。
上から覗き見ることができます。なんだか昔の商店街を見ているような光景で楽しい気分です。
スッポンは3800円。高いんでしょうか安いんでしょうか。
ようやく本題ですが4階に登って魚河岸横丁へ。様々な店舗がぎっしりと待ち構えています。プロ仕様の店なだけあってラインナップもちょっと特殊です。
海産物ももちろんありますが例えば…
船用品店に
はかりの専門店
包丁のお店もあれば
包装容器のお店なども。
仲卸売場だけあって包装容器関係はかなり充実しています。相場感は分かりませんが、文化祭の買い出しにいいんじゃないでしょうか?豊洲中(あるか知らないけど)でキャビア焼きそばなどを作る際にぜひご利用ください。
場内はなんとなく非日常感に溢れていて、「仲買人の方はぜひ○○をご利用ください」と言った案内放送や、フォークリフトの積載量を指示する張り紙等、やや疎外感がありとても楽しい。
搬入エリアとゲートで繋がっており、ターレや原付が店舗間を行き交います。
ターレに乗ったお兄さんが友達と思われるお店の人に「あ〜ミスった!ごめん轢くかも!轢くかも!」といいながら友達をターレで甘く跳ね、友達もちゃんと約束通り5mぐらい吹っ飛ぶという、おそらく毎日交わされるであろう掛け合いが敢行されていました。
楽しく仕事をすることは何より大切です。
私が一番気に入ったのはこの包装用品店で、スーパーでよく見かけるあの「手づくり」「広告の品」といったステッカーを一枚単位で売ってくれるお店です。
そしてなんとこのステッカー、2シートあたり通常100円のところ…
今ならなんと100円!
値下げ等とは書いていないので別に何も問題もないとは思いますが、景品表示法の隙間を突いてくるアメ横感が気持ちいいです。
こちらでは未使用品の巨大冷蔵庫がアウトレットセール中。
傷物のため、通常132万円のところ今なら77万円。お買い得です。長靴を履いて捩り鉢巻きをしたお父さんが、2分ぐらい真剣に品定めをしていました。ここらの人にとっては「ギリありだな」と思わせる絶妙な値付けの様です。
青果棟
あまり魚河岸横丁にいると余計なものを買ってしまいそうなので(1mのまな板など)、今度は青果棟に向かいます。
青果棟は入るなりかなりポップな印象です。
12本の柱にもそれぞれ旬の青果の色が塗ってあり、入り口から進むごとに季節の移り変わりを感じさせるような演出がなされています。
よく見かけるものから何かわからない野菜まで、様々な青果が並びます。
いまが旬ということもあってマツタケをよく見かけました。
通路を一番奥まで進むとホールになっていて全面ガラス張りの大展望です。
市場と言うとどうしても水産市場を想像してしまいますが、こちらも負けず劣らず巨大。
我々がスーパーで買っている野菜もいつかここを通過してきたのかもしれません。隣に積まれたネギと仲良くなったのも束の間、まいばすけっとに出荷されたりして行くのでしょう。
総括
初めて訪れましたが、思っていたよりも観光客フレンドリーな空間で案内などもわかりやすく、見学施設もとても立派なものでした。見学客用に市場の事を紹介するビジター施設なども用意されており、都としても観光施設の色を強く打ち出しているようです。
おそらく今は以前と比べるとかなり人が少ないのだと思いますが混雑することもなく快適に過ごせたと思います。
ただしせりを見学するのには早朝に来ることが必要で、小売店なども午前10時には閉まる店(!)もあり、せりを見ずともそれなりに早起きが求められます。お昼を食べにくるようだと少し遅いかもしれません。
でもたまには休みの日に早起きしてみるのもまた良いものです。
普段の買い物ではあまり感じられない"流通"という概念を目の当たりにしたのが新鮮で非常に面白かった。都心からほぼ近く、アクセスしやすいところですので是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。
〈社会科見学シリーズ〉