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伊豆峰温泉『玉峰館』宿泊記 100年の歴史を感じる温泉宿

そびえ立つ源泉櫓が印象的なこの温泉宿は、伊豆峰温泉『玉峰館』です。

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今回は大正15年(1926年)創業の歴史と伝統あるこの温泉宿に宿泊したエントリー。

飯も良かったですが、なにより温泉が素晴らしい。時間を忘れてのんびり過ごすには最高の宿でした。

 

 

アクセス

今回宿泊した玉峰館は、静岡県賀茂郡河津街にあります。

 伊豆半島は、東京からだとどうも遠く感じてしまうところで、特に下の方まで降りると平気で3時間ぐらいかかってしまいます。

ただその分ハイシーズンを除いてとんでもなく混雑する、渋滞で道が動かないということも少なく、普段は比較的のんびりと過ごせるエリアでもあります。

玉峰館へ車で東京側からアクセスする場合には、一度沼津まで南下し、伊豆縦貫道からの天城越えというルートになると思います。川端康成の名作『伊豆の踊り子』、その足跡を辿るルートです。

道路状況としては片側一車線で特に危険な区間はありません。

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紅葉の時期の天城山はとても美しい

ただしずっと山中ですので、運転が苦手な方は公共交通機関を利用したほうが良いかもしれないですね。(道中、観光バスと観光客と思しき普通車がすれ違いざまにぶつかり大破しているのを見ました…。)

 

電車の場合最寄りは河津駅、東京駅から特急踊り子号で一本です。駅からはタクシーで5分ほどですが、無料の送迎もあるようです。

 

チェックイン

我々は車で向かいましたが、土地柄なのか看板は控えめでうっかり宿の前を通り過ぎてしまいました。戻って駐車場に車を停めていると、いつの間にか仲居さんがいらっしゃって「お荷物をお預かりしましょう」とお声がけいただきました。

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フロントから駐車場は物理的に見えない位置なのですが、おそらくカメラなどがあって車の出入りを確認しているのでしょうね。

神出鬼没の仲居さんの案内で中庭を通り抜け旅館へ向かいます。この中庭がなんとも立派です。紅葉の時期はまた格別だと宿の方が仰っていました。

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 お庭の真ん中には大きな池があり、その向こうに見える建物が本館です。今回はここの2階の部屋に泊まります。ちなみに離れもあって、そのお部屋もまた素晴らしいんですが予算の都合で断念。

いつか偉くなったらレースのシートカバーを掛けたクラウンで来よう。

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 優雅な庭を通り抜けて正面玄関へ、とそこには大迫力の源泉櫓があります。白煙と轟音を上げて、今も活発な自噴をしているようです。当然ながら何種類もあるお風呂はすべて源泉かけ流し、期待が膨らみます。

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ここ峰温泉の歴史は古く、奈良時代にその始まりがあると言われています。その後荒廃し、一度は温泉地としては使われなくなったようですが、1922年、地元の篤志家稲葉時太郎が採掘に成功。

当時噴出した熱泉は50mほどまで猛烈な勢いで吹き上がり、その姿を見た時太郎は温泉に向かって静かに合掌をした、と伝えられています。(なんだそれカッコいいな…)

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100年たった今でも噴き上げ口を絞らなければ30mまで吹き上がり、源泉の温度は100度を保っているとのことですから驚き。

さて、涼しいロビーで一休み。私も最近ようやく覚えてきました、こういう宿は座ってチェックインをするということを。

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 待っている間にはウェルカムドリンク…とウェルカムわらび餅(!)が。キンキンのおしぼりも気持ちがいい。暑い日だったので気分的には顔まで拭こうかと思いましたが、ここが魚民じゃないことを思い出してやめました。

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 仲居さん「明日の朝刊はどちらにいたしましょうか?」

私「ッ?・・・日経でお願いします。」

なぜなら日経が一番高収入っぽい気がしたからです。

 

アレルギーや苦手な料理、食事やお風呂の予定なども聞かれ、きめ細かく一人ひとりに合わせたプランが組み上がっていきます。高級とカテゴライズするホテルや旅館に泊まると、こういう丁寧さにやはりお金を払っているんだなぁと感じます。

 

客室:大正モダンツイン

いよいよお部屋でご案内。廊下からすでに雰囲気が出てます。2013年に一度リニューアルしていますが、建物は基本100年前のままです。

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 これめちゃくちゃ開けたい。

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 今回宿泊した部屋は大正モダンツイン。和洋室扱いとなっています。中はこんな感じ。

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フルハイトの大きな窓がかなり開放的でこれは気持ちがいい。中庭の回遊式庭園をのんびり眺めることができます。

モダンというだけあって、いい意味で旅館らしくない洗練された作り。インテリアデザイナーとして初めて紫綬褒章も受け取った内田繁先生のプロデュースされたお部屋です。

このライトなんかとても素敵だと思いませんか。

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 くるっと向きを変えて、入り口付近はこんな感じ。入って左手がベイシン。

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右手はトイレがあります。もちろんウォシュレット付きで勝手に蓋まで開きます。

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そしてなんと、便座に座るとどこからともなくクラシックが…。音姫の代わりだと思いますが、突然ノクターンが流れてきて意味不明でした。

 水回りは非常にシンプルですが機能的に整っています。源泉を汲んだパックも用意されていました。

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お部屋には浴衣と足袋も用意されています。また女性は他に色浴衣も選べるサービスがありました。

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それでは早速着替えてお風呂に向かいましょう。

 

温泉:2つの大浴場と3つの貸切風呂

ここ玉峰館には2つの大浴場と、3つの貸切風呂があります。

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大浴場は大きな岩風呂と、ヒバづくりの露天風呂があり、時間により男女入れ替え制です。

岩風呂の方は他にお客さんがいたので写真はありませんが、確かに広いお風呂で20人ぐらいは入れるでしょうか。すぐとなりに源泉櫓があり、ゴウゴウと音を立てているのを聞きながら入っているのが気持ちいいお風呂です。

 

風花と呼ばれるもう一つの大浴場はこんな感じ。

洗い場が4つほどあり、内風呂と露天が1つずつ。明るい日差しが気持ちいいお風呂です。

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ちなみにこの宿はタオルがどのお風呂にもおいてあります。部屋から持ってこなくて良いですし、何回でもお風呂に入れるのがありがたい。

冷たいお水も用意されています。

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 それから貸切風呂の方ですが、無料で何回でも利用できます。貸切風呂がある宿は多いですが、はじめから有料であったり、一回だけ無料であったりとなんだかんだ結局お金がかかるところが多いですが、これはありがたい。

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利用には予約が必要で、1回の利用は40分。その後毎回きちんと清掃が入ります。清掃に20分間取ってあり、その1時間をセットとしてチェックインから大体22時まで利用できます。

ただし一度に多くの予約を取ることはできず、翌朝分を除いて入り終わってから次の予約、というルールです。

 とかいって結局予約がいっぱい入って取れないんじゃないの~?と思っていましたがここは全部屋で14部屋ほどしかない小さな旅館です。そのうち5部屋ぐらいは部屋にお風呂がついていますからあまり他のお風呂は使わない。

満室であっても結局10部屋ぐらいで3つのお風呂を使うので、予約が埋まっててつかえないということはそんなにないのだと思います。私が行ったときもほとんど希望の時間に利用することができました。

 

さっそく1つ目、岩風呂光風。渋すぎる…。

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光の入り方が最高ですね。3人ぐらいはゆとりを持って入れる広さがあります。ちなみにどの貸切風呂も洗い場があります。

脱衣所も広く、人数分のアメニティ類を用意しておいていただけます。ドライヤーや冷水もあって、もちろん空調もしっかり効いています。

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ボウルもいちいちオシャレ。タオルは右の穴に突っ込んでおけばいいので楽ちん。ほぼ実家です。

お母さん、ありがとう。一人暮らしを始めてからあなたの苦労が分かりました。

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トイレも脱衣所内にあります。快適です…。

 

続いてこちらは陶器風呂薫風

薫風って一発で変換が出るんですけど、そんな言葉が日本語にはあるんですな…。

夏の季語で意味は「初夏、新緑の間を吹いてくる快い風」だそうです。オシャレすぎ。

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夜もまた美しい、というか夜のほうが私はスキな雰囲気です。

全面ヒノキ張りでいい香りがします。

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洗い場。冬は凍えそうでもある。

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全身シワシワになるまでお風呂に使って大満足です。

 

夕食

食事会場は池の目の前で、大きな窓が気持ちのいいところです。

この宿は基本的に一人の仲居さんが、チェックインから食事のサーブまですべて担当してくれるようでずっと同じ方でした。

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『御献立』 献立に”御”がつくこともあるんですねぇ、世界は広いものです。

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「こちら"ウザク"でございます。」

あ~はいはいウザクね~。という顔で一旦うなずきます。

 

ウザク…ウザク…どこだ…。

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鰻ざくでウザクと読むのか…。

鰻ときゅうりの酢の物らしいです。鰻の味がしました。

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このハモの麦酒揚げが革命みたいな旨さでしたね~。口に入れると柔らかいハモとビールの麦っぽい香りが漂ってきて、トリュフ塩が締めてくれます。うまい天ぷらを食べると、セロテープとかも天ぷらにしたら食えるな、という感想を抱きます。

真ん中の卵豆腐みたいなやつは「ビシソワーズのフランマンジェ~蟹サラダ、エストラゴンクーリー」だそうです。蟹サラダだけは理解しました。

エストラゴンクーリーはテイルズオブ~っぽくて響きが好きになりました。

 

地魚のお造りです。

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4つスペースがある調味料皿の一つは空白です。何か騙されているのかあるいは引き算のおしゃれなのか、ともかくビビらされました。

 

メインの魚、金目の唐墨焼きです。

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添えてあるもみじは普通食べるんでしょうか、食べないんでしょうか。味からすると、食べない物であるような気もしました。

 

お肉は和牛ヒレの網焼きです。

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サラダが出てきたことにより、カロリーが全てゼロになりました。粋な計らいに感謝です。

 

「デザートですが、よろしければバルコニーでお召し上がりになりませんか?」

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食事の途中で場所を変える、という人生で初めての体験です。夏ですが、日が落ちると山中はとんと涼しくなり快適です。

こういう丁寧な食事をすると思うんですが、結構な量を食べても嫌な満腹感にならないですね、ぴったり胃の容量に形を合わせてきてるような、下腹部に来るような不快感はないというのが不思議です。

大変美味しゅうございました。

 

夜の庭園散歩

食後の運動がてら、庭園を散歩します。

夜になるとライトアップもされてなかなか雰囲気があります。

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仲居さんからこの道を最初に案内してもらった際に「足元が悪いですのでお気をつけください」といった2秒後に当の本人が右足首をグキッとひねっていました。平気な顔をしていましたが大丈夫でしたでしょうか、心配です。

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なお周辺にコンビニなどはありませんので、なにか必要なものがあれば到着する前に買っておくことをおすすめします。f:id:yosk_nkjm:20200929184657j:plain

 

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 本館とは道を挟んで離れがあります。プライベート感が高く、なかなか良さそうでしたよ。

それでは戻ってひとっ風呂浴びて寝るとしましょう。

 

と思っていたらお夜食を持ってきていただきました。

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夜食っていうのは日清カップラーメンと同義語だと思っていましたが、どうやらそうとも限らないようです。

 

朝食

朝から大浴場露天風呂に入って爽快な気分です。外で素っ裸になるのはなんと尊い行為でしょうか。

朝食は2部制になっており、朝早い方でお願いしました。

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焼き物は手前がカレイだったと思うんですが、革命みたいな旨さでウケました。

お料理は何もかもが丁寧です。

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 朝からデザートまで平らげて大満足。

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 こうして美味しく丁寧な食事で元気いっぱいになって、伊豆の海へ繰り出してゆくのでした。

 

総括

食事も温泉もレベルが高く、のんびり一日過ごすにはとてもいい宿です。

接客はつかず離れずバランスが取れていて、ゲストから一時も目を離さないというような外資系ホテルはまた一線を画するものです。これはどちらが優れているとかそういう話ではなく、宿泊施設としてのコンセプトの違いなのでしょうね。

建物自体はもちろん古いものですが、水回りなどは新しくなっており快適です。ただどうしても壁の薄さなどは現代のSRC造のホテルと比べたら劣る点はあるでしょう。

それを味と捉えるかどうかで評価が変わってくるところだと思います。

ゆっくり丁寧な時間が流れるこの宿、今度は客室露天付きの離れにも泊まってみたいみたいと思いました。

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