『東京臨海広域防災公園 そなエリア』東京直下地震72hツアー&シン・ゴジラ オペレーションルーム
「72時間の壁」という言葉は、災害発生時に様々なメディアで取り上げられてきた言葉で、多くの方が耳にしたことがあるかと思います。
一般的に人間が飲まず食わずで生き延びられる限界が72時間とされ、それまでに救出できるのかが大きく生存率を分けるというものです。
そのため災害発生後72時間は、人命救助に全力が注がれます。
逆に言えば命に別状はなく無事だった人々への公的支援は後回しになってしまう傾向があります。国や地方自治体からの公的支援が整うまで、自力で生き延びなくてはなりません。
そうした状況をシミュレーション体験できるのが、東京臨海広域防災公園「そなエリア」です。
東京臨海広域防災公園は有明にある、国交省および東京都が管理する広域防災拠点で、平時は公園や防災学習施設として使われています。
その中で首都直下地震へ備えるための学習施設として「そなエリア」が整備されています。今回は「東京直下72hツアー」に参加しました。
子供から大人まで学びがたくさんあるとても良い機会でした。無料で参加できますので、お近くの方はぜひ体験してみると良いかと思います。
アクセス
東京臨海広域防災公園は有明にあり、東京ビッグサイトのすぐそばに位置します。
電車でのアクセスはゆりかもめ有明駅が最も近く、降りて目の前です。りんかい線の国際展示場駅からも徒歩5分ほどで到着することができます。
車の場合、公園の一般駐車場は用意されていませんので、近隣のコインパーキングの利用が必要になります。
この公園は普段はバーベキューやピクニックが楽しめるのどかな公園なのですが、災害発生時には立入禁止エリアとなり、災害現地対策本部が設置、首都圏広域防災の拠点として使われることになります。
そのため園内にはヘリポートや駐機場が設けられており、度々訓練などが行われているようです。つい先日も(2020/11/20)陸上自衛隊、米陸軍・海軍共同の訓練が行われていたようです。間近で見れる機会なんて早々ないから行きたかったな…。
www.tokyorinka//i-koen.jp//2020/
本部棟
防災公園の中核を担うのがこちらの本部棟。なかなかカッコいい2階建ての建物で、当然ですが免震構造となっています。2010年の運営開始。
こういうガラス張りの建物ってよくありますけど、地震とか大丈夫なんですかね。流石に飛び散らないようにフィルムが貼ってあるとは思いますが。
防災学習施設もこの中にあります。入館やツアー参加は無料です。
館内にはお手洗いやコインロッカーなどもあるので公園利用者も出入りしているようです。その他保存食や防災グッズなどを扱う売店もあります。
東京直下72hツアー
今回参加した東京直下72hツアーは個人の場合特に予約などは必要ありません。数十分おきに開始しますので、ふらっと行って参加することができます。
集合時間になるとツアーの説明があり、参加者にタブレットが手渡されます。ツアーはこのタブレットの指示に従って進行し、災害にまつわるクイズに答えたり、あるいはARで資料を見ながら進んでいきます。
乗り込んでいたデパートのエレベーターが緊急停止するところからツアーはスタートです。
誘導灯に従って通路を進みます。暗すぎて完全に画質が終わっています。iPhone11の敗北。
避難経路に消防法違反っぽいダンボールが置かれているところも芸が細かいですね。百貨店などは売り場面積に応じて1.2m~2mの避難経路を確保しなければなりません。
「すぐに片付けること!」みたいな張り紙、高校時代を思い出しておセンチな気持ちになります。
避難経路を抜けると、崩壊した街に出ます。
傾いた建物にぶらさがった電線、ヘリコプターが近づいては遠ざかり、サイレンや緊急地震速報が鳴り響いています。
街頭ビジョンではアナウンサーが東京で震度7の大地震があったことを伝えています。
ここは本当に作り込みがすごくて、音や雰囲気もあいまってちいさい子供なら泣いちゃうぐらいの迫力がありました。
ここではタブレットに指示に従い、チェックポイントに向かいます。内容はタブレットごとに異なりますので、それぞれバラバラに動きます。
チェックポイントに到達すると、「この標識の意味は?」「〇〇な状況であなたが起こすべき行動は?」といった災害にまつわるクイズが出題され、それを解きながらストーリーを進めていきます。
直感で選ぶと大人でも間違ったりして意外と手強いクイズです。
道を進むと、崩壊した家とその向こうでは火災も発生。内閣府の試算では、首都直下地震による予想最大死者数23,000人の内、半数以上は火災で無くなるとの予想されています。
被災した家には避難場所を家族に伝えるメモなども残されていましたが、スタッフによるとこうして留守だとわかると火事場泥棒に入られるケースもあるようで、予め家族でメモを残すちょっと分かりづらい場所を打ち合わせしておく必要があるとのことでした。
悲しいことですが大災害のたびにこうした事件は置きており、東日本大震災後では宮城県内だけで地震発生の26日後までに約1億円の窃盗被害が出ています。
一通りストーリーを進め、次へ再現避難場所・避難所へ向かいます。
避難場所は災害が起こった直後、身の安全を確保するために一次避難をする場所。避難所は被災によって居住の場所を失った人に対して提供される居住地です。
身近なものを使った簡易テントや、災害時にはかまどとして活用できるベンチなど、生きた知識の数々が展示されています。
下は東日本大震災後の避難所の様子を再現したものです。
私は割と寝る時の物音が気になるタイプで、旅行先だと耳栓をして寝ていたりするのですが、そんな自分が避難所生活になったストレスを想像すると…恐ろしいものがあります。
こちらは携帯の充電コーナー。
当時は私もガラケーだったかと思いますが、ガラケーはできることは少ない分電池持ちが良かったですね。2,3日充電しなくても平気だった記憶があります。
震災当時、通信が混雑していてメールが一週間ぐらい遅延して届くことがよくありました。携帯電話以外の通信手段も日頃から確認しておかなければ、と思い返したのでした。
再現避難場所ではARを活用し、さまざまな資料を見た後に最終的な得点が表示されます。結果を元にスタッフから簡単に説明があって、ツアーは終了です。施設の作り込みがしっかりしていてとても面白かった。
子供も多いせいもあってか、スタッフはディズニーランドのキャストのような平易な説明を心がけていてとてもわかりやすかったです。家族連れでも一度は来てみると良い勉強になると思います。
学習見学施設
ツアーを終えると、今度は個人見学でさまざまな災害に関する展示のコーナーを抜けていく事になります。
最初は階段を活用して津波を視覚的に表したコーナー。東日本大震災の時は私が住んでいた地区は震度5強ほどで、そこまで深刻な被害は出ていなかったため、帰宅後津波に飲み込まれた街を見たときには愕然としたことを覚えています。
続いては首都直下地震の想定コーナーで、想定される震源や被害などが様々な観点からシミュレーションされ展示されています。
学会のポスター発表を思い出します。ここは正直子供はあまり面白くないかな、と思いますがどちらかというと大人がじっくり読んで面白い場所かなと思いました。
その隣は事例に学ぶ災害知識のコーナーということで、実際に被災した方々が身近なものを活用して発揮された知識の数々が披露されています。
雑誌のビニール袋で骨折の応急処置をしたり、アルミ缶で炊飯をしたり、みんないろいろなことを考えつくものです。
アルミ缶炊飯、以前興味本位でやったことがあるんですが結構ちゃんとお米が炊けて感動しました。
気温3度の海岸で、深夜に初日の出を待ちながら作った記憶…。おこげもできて美味かった思い出があります。
他には自助でも活用できる資機材や、保存食なども展示されています。
登山でも時々活用するアルファ米は非常食としても有名です。(むしろ逆か?)
お湯がなくても水だけで作ることができますが、実際に避難生活をした人の話を読むとやはり温かいものが恋しくなるとのことでしたので、シングルバーナーぐらいはあっても良いかもしれません。
昨年の台風の時に友人が一晩避難していましたが、銀マットやエマージェンシーブラケットなど、持っていった装備はほとんど登山用品と共通とのことでした。登山ってそれ自体が日常生活からの避難みたいなものですからね…。
『シン・ゴジラ』オペレーションルーム
続いては、地味ながらも人によっては大興奮であろうスポットです。
それがこちらのオペレーションルーム。
なんか見たことある…?という人もいるかもしれませんが、ここは映画『シンゴジラ』で首相官邸の地下にあるという設定の危機管理センターオペレーションルーム、そのロケ地です。本物の防災拠点を使っていたんですね。
下の動画22秒あたりから映っています。
本物の防災拠点であることから、災害発生時には30分以内に全て撤収すること、という条件で撮影を行なっていたそうです。
正面のモニターは300インチで大迫力、幅が約6m高さが4.5mもあります。
ちなみにこのオペレーションルーム、使用目的の条件付きではありますが意外とリーズナブルに借りることができるようです。
シンゴジラに出てくるオペレーションルームは、東京の有明の防災拠点の本物で、撮影などにもお貸ししています。一応、防災に関する広報に資することが条件です。一日当たりの賃料は約三万円と大変お安くなっています。ただし、大規模災害発生時は直ちに退去していただきます。問い合わせは内閣府防災へ
— 河野太郎 (@konotarogomame) 2017年11月12日
おそらく借りる機会は一生ありませんが、一度階下に降りてみて大きさを味わってみたい…。過去には中に入れるツアーを開催したこともあるとのことでした。
総括
存在はなんとなく知っていたものの、今まで来る機会のなかったこの場所。
近年大きな災害が続いていることもあり、ふと思い立って行ってみましたがかなり本格的でたくさんの学びがありました。被災場所が再現されたエリアはとてもリアルで驚かされます。誤解を恐れずに言えば遊びに行くような感覚で訪れてみても良いと思います。きっといろいろなものを得て帰ってくると思います。
そなエリアで勉強をしたあと売店で一つ美味しそうな非常食でも買ってみて、併設された公園でピクニック気分で食べてみても良いかもしれません。
今一度災害時の行動について考えさせられる有意義な体験でした。
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