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【山と人の歴史】大町山岳博物館に行ってきた

長野県の北西部にある大町市

西側には3000m級の飛騨山脈、通称北アルプスが走っている山間の街です。

そのような立地もあり、ここ大町は文化や産業など様々な面で"山"と"人"が交わる場所でした。

そこにテーマを置いた博物館が大町山岳博物館です。

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 今回はその大町山岳博物館を訪れたレポート。

貴重な山岳史の資料も多く、山好きとしては非常に興味深い場所でした。

 

大町山岳博物館とは

博物館は大町市の東部、中心地から少しだけ山に入った丘の上のあります。とはいっても信濃大町駅からは車で10分ほどで着く場所です。

駐車場に着くなり北アルプスの絶景が拝める…はずでしたがこの日はあいにくの曇り空、雲に阻まれてしまいました。次回の宿題としましょう。

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エントランスではおそらくカモシカだと思いますが、親子で迎えてくれます。遠く雲の向こうの北アに思いを馳せているようです。

現在の建物は1982年に完成したもので、もう40年ほど経つ建物ですが、ここ山博の歴史は更に古く1951年(昭和26年)に日本初の山岳博物館として開館しました。

 

戦後間もない当初、混乱した世の中でしたが、地方文化の向上を目指し地元青年部の努力によって設立されました。その後二度ほど場所を変え、現在の建物は3代目ということになります。

地元の人や山屋、多くの人に愛され今年で約70年。当時皇太子だった天皇陛下も行啓されたようです。

建物は3階建てで、後ほど紹介しますが付属園として動植物園もあります。入館料は大人450円、市内の学生やシニアは無料のようです。それでは入ってみましょう。

 

3階 展望ラウンジ

入り口でチケットを受け取ると、順路の案内をしていただけます。まず最上階3階に上がっていただき、下に降りてくる形でご覧ください、とのことでした。

3階は展望ラウンジとなっていて、降りた瞬間美しい山々が姿を見せてくれます。

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生憎の曇り空で少々悲しいところではありますが、それでも迫力は満点です。

右奥に見えるのが蓮華岳でしょうか。後立山連峰の最南端にある2,799mの山です。

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写真撮影用に開閉できる小窓まで用意されていてありがたいですね。

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3階にはソファーも用意されていて、景色を眺めながらのんびりすることができます。他にも資料や映像が放映されていて、資料室のような役割を担っているようです。

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2階 山の成り立ち/山と生きもの

階段を降りて二階に向かうと、山の成り立ちのコーナーがあります。さまざまな岩石に実際に手で触れることができます。

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また、北アルプスの成り立ちについて、映像資料による解説もなされていました。

もう一つの部屋は山と生きものコーナーとなっていて、大町の市街地から高山地帯にいたるまで、ここに生息する様々な動物の剥製展示があります。

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亜高山帯に生息するカモシカや、北アルプスの象徴的な存在と言っても良いライチョウについてフィーチャーしていますが、それ以外に里山に住む生物なども紹介されています。

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ママが怒ってるからもう喧嘩はやめたほうが良いよ子どもたち…。

年々数が減少していると言われているライチョウの保護に関する歴史的資料なども展示してありました。

ちなみにトイレは2階に男子が、1階に女子トイレがあります。女子はわかりませんが、男子トイレは最近リニューアルされたようで、非常に綺麗でしたよ。

 

1階 山と人

受付と同じ1階まで降りてきました。

ここは山と人という展示になっていて、その名の通り北アルプスの山々と人間がどのように交錯してきたのか。例えば狩猟や漁労、森林資源の活用から、冒険としてあるいは趣味としての自由意志の登山の歴史など、文化的な側面から山と人のつながりにアプローチをした展示がされています。

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 入口はいってすぐ目に留まるのは、登山装備の歴史の展示。わらじやカンジキから、ゴアテックスのハイスペック装備まで、その進化の過程が伺えます。

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真ん中の人のような洋装は、映画『剣岳 点の記』で中村トオル演じる小島烏水が身にまとっていましたが、なかなか格好いいですね。機能性はともかくとして…。

ちなみに一番右の人の装備はほぼ全てmont-bellでした。協賛を受けているんでしょうか。

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”登山とは何でしょうか。人はなぜ山に登るのでしょうか。”

なかなか難しい問いですが、そんな疑問に歴史的アプローチから答えを探っていく…いや、答えなどおそらくないのですが山と付き合っている一人ひとりが向き合っていく、そんな空間になっています。

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 他にも針ノ木岳登山の中継地として現在も営業中の山小屋、大沢小屋の昔の姿の原寸大復元展示などもあり、映像とともに紹介されていました。

見入ってしまい写真があまりありませんが、日本の近代登山の幕開けから、ヒマラヤ山脈への挑戦としった登山史が流れでわかるようになっており、大変興味深い展示となっていました。

 

1階には他にミュージアムショップ兼カフェも併設されています。

中に入るとご主人が麦茶を振る舞ってくれて、なくなると「いる?」と更に注いでくれそうな勢い。無料で頂くのが申し訳なくなるほどです。カフェとしての利益はどう考えても減ってしまう気がするのですが、そんなことはあまり気にしていない様子で、笑顔が素敵な方でした。

ごちそうさまでした。

 

付属園(動植物園)

大変に満足をして博物館をでますが、コレで終わりでは有りません。右手に向かって歩いていくと、大町山岳博物館付属園があります。

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ここは貴重な野生の動植物の保護、繁殖、調査研究を行っている施設で、主に北アルプス山麓から高山地帯まで、様々な動植物が暮らしている場所です。ちなみに付属園のみを見学する場合、入園は無料のようです。

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 入口入って直ぐ迎えてくれるのはスバールバルライチョウ

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もともとは北欧やロシアなどに生息している種類のライチョウですが、ニホンライチョウの近縁種であることから、飼育繁殖技術の向上のために飼育されています。ゆっくり歩く姿が可愛らしい。

ちょっと遠いですがニホンライチョウもいます。

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 こちらはカモシカカモシカは脚力が強く、急な斜面を物ともせずに移動します。自然の地形をうまく使って、カモシカらしい放飼場になっていますね。

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学生の頃、よくスキーでガーラ湯沢スキー場に行っていたのですが、そこでもよくカモシカを見ました。とんでもない傾斜をするすると跳ねるように走っていく姿が印象に残っています。

 

この付属園にはライチョウカモシカなどの保護を目的として飼育されている動物の他に、ホンダタヌキやハクビシンなども飼育されています。彼らは怪我等の原因で野生下で生きていくことが難しいと判断された個体が多いようです。

付属園のスタッフブログに考えさせられる記述がありました。

 付属園にいる動物達には、一匹一匹に事情があります。飼育員が同じ部屋に入って清掃しても、威嚇してきたり、怯えてしまう子がいます。しかし、それこそが野生動物本来の、あるべき姿だと思います。彼らは動物園にいようとも、野生動物であることに変わりないのだと気付かされます。(中略)身近な、野生下出身の動物を中心に扱う施設として、野生動物とはどういうものか、改めて皆様にお伝え出来たらと思います。

遠藤モナミ | スタッフブログ | 大町山岳博物館

博物館内の展示にも付属園でも野生動物と人間の共生や保護に関する記述が多くありました。

同行者とも「人間が自然動物を絶滅から守ることは100%善なのか」「"自然"という概念に対して人間は内側にいるのか外側にいるのか」そんな議論に終始しました。何が正しいのかをすぐに判断することは難しいかもしれませんが、考えるきっかけになる非常に良い機会でした。

 

終わりに

一応山登りを趣味としているものとして、純粋な好奇心を満たしてくれる展示も有りましたが、それ以上にいろいろなことを考えさせてくれる博物館でした。

山やその生態系と、人間の交わり。

楽しみながら学べる大町山岳博物館、オススメです。