奥多摩白丸ダムの”魚道”に潜入
「奥多摩湖」は聞いたことがあっても「白丸湖」は聞いたことがない、という人が多いと思いますし僕もそうでした。
白丸湖は、東京神奈川を流れる「多摩川」の上流部にあり、奥多摩湖からみると少し下流側にあります。
ちなみに「多摩川」と言う名前になるのは奥多摩湖の出口である小河内ダムより下流で、それより上流は一之瀬川、丹波川という名称になります。(知らなかった)
この白丸湖はその多摩川を白丸ダムによってせき止めてできたダム湖・人造湖です。
地図で見ても細い長い形をしており、川と見分けがつかないちょっと地味な湖ですが、エメラルドグリーンの湖面が美しく、ウォーターアクティビティ等が有名なようです。
僕が白丸湖に初めて訪れたのも、2年前ここにカヤックをやりに来たときでした。
エメラルドグリーンの美しい湖面を進んでいく、気持ちの良い思い出です。
そんな白丸湖ですが、前述の通りこの湖の出口は白丸ダムによってせき止められています。その白丸ダムにはちょっとめずらしい、魚道を見学できる施設があります。
魚道とはその名の通り魚の通る道なのですが、今日はそんな白丸ダムの魚道にお邪魔した記事です。
白丸ダム
白丸湖の出口、白丸ダムは奥多摩町の白丸にあります。最寄り駅はJR青梅線白丸駅。歩くと20分ほどかかるようです。
車で行く場合は白丸魚道管理棟を目指してください。15台ほど駐車できるスペースと、トイレがあります。
道路の向かいに展望台があるのでそちらに向かうと…。
白丸ダム本体が見れます。この展望台足元が割とスケスケで震えながらこの写真を撮りました。ちょうど人が映っていますね。構造物としては巨大ですが、ダムとして比較的小規模なものでしょうか。
堤高は30.3m、ゲート設備を含めた堤頂長は61mあります。構造としては重力式コンクリートダムでダム自体の重さによって水圧に耐える一般的なダムです。
着工は1960年、完成は1963年とのことですでに半世紀以上経っていますね。ちなみに有名な富山の黒部ダムも1963年の完成で、同級生になります。
こちらはダム下流側の写真ですが、見ていただけば分かる通りかなり川幅の細いところにダムが建設されています。この付近は白丸狭窄地帯と呼ばれ、かなりの断崖です。
下流には巨岩・奇岩を楽しむことができる鳩ノ巣渓谷・御岳渓谷などがあります。
駐車場から階段を降りてダムの堤体まで行くことができます。
青いな…。バスロマン?
ダム脇の通路を降りていくと、ジェットコースタ的な構造物が脇を走っています。トロッコとか乗せて一回300円のアトラクションにするのはどうでしょうか、東京都交通局さん。
(実際はどうやらゲートに溜まった流木などのゴミを運搬するための装置のようです。)
堤体に到着です。
上から白丸湖側の水門を覗き込みます。
コ、コエー!シンプルに高いことが怖いのと、絶対に力では勝てない巨大な構造物を見るとなんか怖いです。あと、場所柄死体とか浮かんでたらどうしよう…みたいなことも考えてしまいます。
こちらは下流側。水面までは約30mあるのでこちらも負けず劣らず怖い。こんなに怖い怖い行っているのになぜ僕はダムに来てしまうんでしょうか。なんなら好きなんですがダムのこと。
そしてもうちょっと顔を上げてみると、東京湾まで続く多摩川の美しい渓谷を望むことができます。普段23区内で見る多摩川は川幅が何十mもあって、のっぺりと流れていますが、上流部は結構猛々しいですね。
あとカッコつけて「普段23区内で見る」と言いましたが、僕は埼玉に住んでいるので日常的に多摩川を見ることはありません。お詫びして訂正いたします。
白丸ダム魚道
そして注目していただきたいのがココ!ココが今回のテーマとなる「白丸ダム魚道」です。
まるで囲んだ部分、階段のようになっているのがわかるでしょうか。これが「魚道」です。
そもそも魚道とは何なのか?ということですが、ダムや堰など、魚の遡行が妨げられる箇所に設置される、魚専用の道です。
いま僕たちが立っている白丸ダムですが、前述の通り高さは何十mもあります。当然ですが魚たちはそんなダムを飛び越えていくことができません。多摩川上流部はヤマメ・アユなどを始め、様々な魚が生息していますが、その生息域を分断してしまうことになります。
そこで、ダムの脇に魚専用の通路を作り水を流すことでそこを通って魚たちに上流まで遡行してもらおう、というのがこの魚道です。
巨大なダムに限らず、近くの大きな川に堰などがあれば見てみてください。大小様々な魚道を見ることができると見つけることができると思います。
さて、この白丸ダム魚道ですが、ダムの前後で高低差約30mもあるところを、地形的な制約もある受けながらどうにかして魚を通してやろう、という努力の詰まった魚道なのです。
画像の奥側の下流部から遡行してきた魚は、ダムに阻まれUターンする形で、画像中央の魚道入り口を見つけます。そして階段状になっている魚道を一段ずつ登ってゆくのです。
これは別の場所の画像ですが、このように各段には障害物が設置しており、魚が休憩できるようになっています。休憩し、遡行する。これを繰り返しながら魚たちは上流を目指していきます。
そして実はこの魚道は、地表に出ている部分だけではなく、地下トンネルを通って行きます。
下の画像の中央下V字の部分がダムの堤体から見える地表部分です。地形上の制約からそのまま上流まで地表を通していくのは難しく、地中にトンネルを掘って上流部とつなげる様になっています。
そしてその地下トンネル部分もここ白丸ダムは一般に開放しています。これは結構珍しいんじゃないでしょうか。
地下トンネル部分に入るには、一度駐車場がある場所まで戻り、そこにある管理棟から降りていかなければなりません。
管理棟のボランティアと思われるおじい様方から施設概要と教えてもらい、螺旋階段で地下に潜っていきます。見学料は無料です。
下から。
一番下まで降り立つとそこはトンネルになっていて、遠くに光がみえます。
そう!ここが先程ダムの堤体から見た地表部の魚道からつながっているのです。
地表部の魚道は約200mあります。遡行して魚たちはその後このトンネルに入り、更に130mほど遡行し、ようやく上流白丸湖にたどり着くことができるのです。きっとかなり長く険しい道程でしょう。
トンネルは途中で45度ほど折れており、地表部と接続する下流側半分は地表部と同じくアイスハーバー式と呼ばれる、階段の途中に隔壁を設置し、水流から逃れて休憩をしながら遡行できる形式になっています。
そして折れ曲がる接合部には休憩用のプールが設置しており、水流が弱められています。
非常に見づらくて申し訳ないのですが、遡行してきた魚を見ることができます。20cmぐらいあるおそらくはヤマメかと思います。
そこからさらに上流部は、潜孔式魚道と言って、隔壁の底の部分に穴をあけ、底を通って遡行していく形式が取られています。
アイスハーバー式と違って、水が各段を越流していかないので水音がせずかなり静かです。残念ながら魚は見えませんでしたが、潜孔部を目視できるのぞき窓もありました。じっとまっていれば魚が見えれたかもしれません。
見学できるのはここまでで地上への階段があります。魚道自体はこの先もトンネル部を進んでゆき、解説図を見ると約7mほどで上流白丸湖に到達できるようです。
魚たち、上流に行っても頑張れよ!
というわけでかなり地味な魚道見学なのですが、こういうDEEPめな構造物が好きな人や生き物好きな人にはかなり楽しい白丸魚道、オススメです。都内からも高速使えば割とすぐ。
足元は滑りやすいので靴のチョイスに気をつけて、虫も結構多いので苦手な方はやめておいたほうがいいかもしれません。
内部はかなり涼しいので涼みがてら、奥多摩に行った際はぜひ立ち寄ってみてください。
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