大谷資料館で荘厳な採石場跡に心ときめく
地下に広がる荘厳な巨大空間。
ここは宇都宮市大谷町にある「大谷資料館」。かつての採石場です。
大谷町は宇都宮駅から車で20分ほどの場所にある小さな田舎町ですが、かつてここには一大産業がありました。
それが、「大谷石」です。
このエリアから産出される凝灰岩ですが、柔らかく加工が容易で見栄えもいいことから、古くから石垣や住宅の門柱などに使用されてきた名石。
宇都宮城等にも用いられ、近代に入ってからは帝国ホテル等でも採用されています。
そんな大谷石の採石場跡地を博物館、見学施設をして開放しているのがこの大谷資料館になります。1919年から1980年代にかけて約60年以上という長い時間をかけて形成された2万平方kmもの巨大空間。時間という澱が堆積した地下神殿です。
それでは、中はとても冷えるので羽織るものを持って、さっそく向かいましょう。
※訪問日は2017年の3月
アクセス
最寄りのインターは東北道宇都宮IC。降りて8km,15分ほどで到着します。宇都宮駅からバスも出ているようです。
道中すでにちょっと雰囲気が出ており、否応なしにテンションが上ってきます。
駐車場はかなり巨大で100台ほど止められるスペースがあります。何度か行きましたが満車になるようなことはないと思います。
駐車場からは200mほど坂道を歩いて登らなければいけませんが、上がってくると…。
目に飛び込んでくるのは巨大な岩壁。現在バス・体が不自由な方専用の駐車場となっているこのエリアは、平場掘りが行われていたエリアでした。地上からどんどん下に堀り進めていく掘削方法です。かつてはこの足元の空間も地下、山中だったんですね。
資料館
チケットを買い、採掘場への階段を降りる前に資料館を見学することをおすすめします。20歩で一周できるような小さな部屋ですが、実際に使用されていた様々な道具が展示しており、また時代による採掘方法の変化に関する資料など採石場跡地をより楽しむための工夫がなされています。
かつて採掘作業は人力で行われ、長さ3尺(約90cm)の石柱を掘り進めるためには4000回ツルハシを振るったと言われています。1人一日10本の石柱を掘り出すのがやっとだったようです。当然掘り出した石柱も人力で背負って運び出します。重さは重いものでは100kgほどあったそうで、当時の苦労が伺えます。
歴史を学んだところで、いよいよ採掘場への階段を降りていきます。
採掘場へ
採掘場へは長く急な階段を下っていきます。下に行けば行くほど、気温が下がっていくのを感じます。
しばらく下ると、突然視界がひらけて巨大な地下空間が目の前に現れます。
写真ではうまく表現できないのですが、実物はかなりの迫力です。思わず声が出ます。
場内は広場を除いて一方通行。三脚などの持ち込みも禁止です。後ろの方の邪魔にならないようにサクサク進みましょう。
天井が崩落しないよう、このように支柱となる部分を残しながら掘削を進めたようです。
注意深く見ると、柱の上部と下部で掘り進めた方向が違うのがわかるでしょうか。
坑内堀り、と言ってまず山の中腹から横方向に向かって掘り進めます。(写真①)天井と柱のつなぎ目辺見える縦筋がその痕跡です。
その後、今私達が立っている場所まで掘り下げていく(写真②)という工法になります。
ちなみに先程「天井が崩落しないように」と言いましたが、実は平成に入ってからも地面が陥没して家が傾いたり道路が崩落したりする事故も発生しているようです。
でも、坑内にいる間はあんまりこの話はしないでおきましょうかね…。
一部天井に穴が空いていて光が差しているところがあります。
現在の掘削位置を知るために地上側から掘った穴だと説明がありました。測定機械も何もない時代ですから、とりあえず掘って確かめるという方針だったようです。
場内はところどころ広場になっていてちょっと駆け出したい気持ちになります。
完全にFINAL FANTASYのラスボスステージみたいな場所もあります。差し込む光が神々しい。柵の奥は地下水が溜まっており立ち入りできません。地下にある池ってなんか、心がザワゾワしますね…。
上の写真の左手の壁、途中から堀り跡に変化があるのがわかるでしょうか。上部はちょっとよれた横溝、下部は無機質な縦の直線が並んでいるのが見て取れると思います。
これは機械堀りを行った跡なのです。
戦後、人件費の高騰とともに人力での採掘は採算が取れなくなり、国と県の補助金を受けてチェーンソー裁断機の導入が始まりました。結果として手堀り時代に比べ、効率は飛躍的に上昇し、生産数は2倍以上にまでなったと言われています。
なお、現在公開されている範囲も十分広いのですが、実は大谷資料館には非公開ゾーンもあります。
隙間からちょろっと見えますが…
うわっ、行ってみたい…。
時折期間限定で公開されるようですよ。
こちらは帰り道に入口側を写したものですが、階段の一番高くなっているところが、地上から降りて最初に辿り着く場所です。こう見ると結構高いな。
出口付近には地上と大きな通路でつながっている場所もあります。車の出入りもできるようでタイヤ痕がありました。
地下坑道を爆走…やってみたすぎるな…。
勇者ヨシヒコ、翔んで埼玉など多くのテレビ・映画撮影などでも使われているようですね。
さて、行きに下った分だけ帰り道はしっかり登らなければいけません。
地上に上がるとかき氷等のお店もあるので、それを目指して頑張りましょう。
まただいぶ長くなってしまいましたが、手軽にアドベンチャーな気分になれる楽しい場所です。宇都宮餃子を食べに行くのとセットで、皆様も訪れてみてはいかがでしょうか。